国際ビジネスメールで誤解を防ぐ 略語・俗語を使わない書き方
略語や俗語を避ける

国際ビジネスの現場では、メールでのコミュニケーションが不可欠です。
しかし、言葉の選び方一つで、相手に誤解を与えたり、不快な思いをさせたりする可能性があります。
特に、海外とのやり取りでは、文化や言語の違いから、日本国内では問題ない表現が、思わぬトラブルを招くことも少なくありません。
「いつもお世話になっております。ASAPでお願いできますでしょうか?(汗)」
普段、同僚との間で使うこのような表現、海外のビジネスパートナーには通用しないかもしれません。
「ASAP」や「(汗)」といった略語や俗語は、相手に「急かされている」「失礼だ」と感じさせてしまう可能性があります。
この記事では、国際ビジネスメールで避けるべき略語・俗語と、その代替表現について解説します。
また、グローバルビジネスで通用する、丁寧で誤解のないメールの書き方についてもご紹介します。
この記事を読むことで、あなたは自信を持って海外のビジネスパーソンとコミュニケーションを取れるようになるでしょう。
国際メールで略語・俗語がNGな理由
文化的背景の違いによる誤解のリスク
略語や俗語は、特定の文化やコミュニティの中で使われることが多いため、相手がその背景を共有していない場合、意味が通じない、あるいは誤解を生む可能性があります。
例えば、日本では「ASAP」は「できるだけ早く」という意味で広く使われていますが、文化的背景が異なる海外では、相手に不快感を与えたり、失礼だと受け取られたりする可能性があります。
例文 ASAPを使った場合
件名:Request for Quotation
Dear [宛先],
I hope this email finds you well.
Could you please send me the quotation ASAP?
Thank you for your cooperation.
この例文では、ASAPが「できるだけ早く」という意味で使われていますが、相手によっては「急かされている」と感じる可能性があります。
プロフェッショナルな印象を損なう可能性
ビジネスメールは、プロフェッショナルなコミュニケーションツールです。
略語や俗語の使用は、相手に「カジュアルすぎる」「教養がない」といった印象を与え、あなたの信頼性を損なう可能性があります。
特に、初めて連絡を取る相手や、目上の相手に対しては、略語や俗語の使用は避けるべきです。
フォーマルな表現を使うことで、相手に敬意を示し、プロフェッショナルな印象を与えることができます。
相手への配慮と敬意の欠如と捉えられる
略語や俗語は、相手に「手抜きをしている」「自分を軽んじている」と感じさせる可能性があります。
特に、ビジネスメールでは、相手への配慮と敬意を示すことが重要です。
略語や俗語を使わずに、丁寧な言葉遣いを心がけることで、相手に「大切にされている」と感じてもらい、良好な関係を築くことができます。
ビジネスメールで避けたい略語とその代替表現
前述の通り、国際ビジネスメールでは、略語や俗語の使用は避けるべきです。
ここでは、ビジネスシーンでよく使われがちな略語と、よりフォーマルで誤解のない代替表現を具体的に見ていきましょう。
これらの代替表現を使うことで、相手に失礼なく、正確に情報を伝えることができます。
ASAP (as soon as possible) の代替表現
ASAPは「できるだけ早く」という意味で、ビジネスシーンで頻繁に使われます。
しかし、相手に急ぎの印象を与えすぎてしまう可能性もあります。
より丁寧で具体的な表現を使うことをおすすめします。
例文:ASAPの代替表現
件名:Request for Quotation
Dear [宛先],
I hope this email finds you well.
Could you please send me the quotation by March 26, 2025?
Thank you for your cooperation.
上記のように、「ASAP」の代わりに具体的な期日(例文では「March 26, 2025」)を提示することで、相手に明確な行動を促しつつ、丁寧な印象を与えることができます。
もし具体的な期日が設定できない場合は、以下のように表現することも可能です。
例文:具体的な期日が提示できない場合
件名:Request for Quotation
Dear [宛先],
I hope this email finds you well.
Could you please send me the quotation sometime between March 24-28?
Thank you for your cooperation.
ある程度の期間の幅を持たせる(この例文の場合「sometime between March 24-28」)ことで、相手にプレッシャーを与えすぎずに、返信を促すことができます。
FYI (for your information) の代替表現
FYIは「ご参考までに」という意味で、情報提供の際に使われます。
しかし、ややカジュアルな印象を与えるため、ビジネスメールではより丁寧な表現を使う方が適切です。
悪い例:FYIを使ったメール例文
件名: Materials for Project Meeting
Dear [宛先],
I hope this email finds you well.
FYI, I'm sending you the presentation slides and market research data.
Please review these materials before our discussion.
Best regards,
[Your Name]
よい例:FYIの代替表現を使ったメール例文
件名: Materials for Project Meeting
Dear [宛先],
I hope this email finds you well.
I am pleased to provide you with the presentation slides and market research data. These documents contain essential information that will be discussed
during our meeting.I kindly request that you review these materials prior to our discussion to ensure a productive meeting.
Please do not hesitate to contact me should you require any clarification regarding the provided documents.
Best regards,
[Your Name]
FYIという言葉を使わずに、資料を送付したことと、その内容を簡潔に伝えることで、丁寧かつ分かりやすいメールになります。
その他のよく使われる略語とフォーマルな言い換え
上記以外にも、ビジネスメールで避けたい略語はたくさんあります。
以下に、よく使われる略語と、その代替表現をいくつか紹介します。
- TBD (to be determined): 未定 → 後日改めてご連絡いたします
- N/A (not applicable): 該当なし → 該当いたしません
- e.g. (for example): 例えば → 例を挙げますと
- i.e. (that is): すなわち → 言い換えますと
- etc. (et cetera): など → その他
これらの略語も、上記で紹介した例と同様に、より具体的で丁寧な表現に置き換えることで、誤解を防ぎ、プロフェッショナルな印象を与えることができます。
次は、略語だけでなく、ビジネスメールで避けるべき「俗語」と、よりフォーマルな表現について見ていきましょう。
ビジネスメールで避けたい日本語の俗語とフォーマルな表現
日本語でやりとりする場合も、略語だけでなく、俗語(スラング)やカジュアルすぎる表現も、国際ビジネスメールでは避けるべきです。
ここでは、具体的な例を挙げながら、よりフォーマルで誤解のない表現を解説していきます。
カジュアルすぎる言葉遣いの例と改善案
日常会話で使うような砕けすぎた表現は、ビジネスシーン、特に国際メールではプロフェッショナルさに欠ける印象を与えます。
悪い例:カジュアルすぎる表現
件名:[件名]
[宛先]様
ちょーヤバい状況っす!
例の件、マジで急ぎでお願いしたいんすけど。
納期、めっちゃタイトで、ヤバいっす。
よろしくっす!
改善例:フォーマルな表現
件名:[件名]
[宛先]様
いつもお世話になっております。
[件名]の件につきまして、大変恐縮ではございますが、至急ご対応いただけますようお願い申し上げます。
納期が非常に厳しく、状況が逼迫しております。
何卒よろしくお願い申し上げます。
上記の例のように、「ちょーヤバい」「マジで」「~っす」といった言葉遣いは避け、「大変恐縮ではございますが」「~いただけますようお願い申し上げます」といった丁寧な表現に置き換えましょう。
業界特有の俗語を避けるべき理由
特定の業界やコミュニティ内でのみ通用する俗語は、相手に意味が伝わらない可能性があります。
また、相手に不快感を与える可能性も考慮し、使用は避けましょう。
例えば、IT業界でよく使われる「ググる」(Googleで検索する)、「情シス」(情報システム部門)などの言葉は、他の業界の人には理解できないかもしれません。
悪い例:業界特有の俗語
件名:[件名]
[宛先]様
[件名]の件、まずはググってみてください。
不明な点は、情シスにエスカレしてください。
よろしくお願いします。
改善例:一般的な表現
件名:[件名]
[宛先]様
[件名]の件、まずはインターネットで検索して詳細をご確認ください。
ご不明な点がございましたら、情報システム部門にご連絡いただき、ご指示を仰いでください。
よろしくお願いします。
このように、誰にでも理解できる一般的な言葉に置き換えることが重要です。
誤解を招きやすい曖昧な表現の具体例
日本語には、文脈によって意味が変わる曖昧な表現が多く存在します。
国際メールでは、このような表現は誤解の原因となるため、明確で具体的な表現を心がけましょう。
悪い例:曖昧な表現
件名:[件名]
[宛先]様
[件名]の件、なるはやで対応します。
よきにはからってください。
よろしくお願いします。
改善例:明確な表現
件名:[件名]
[宛先]様
[件名]の件、明日中に対応いたします。
承認いただけますよう、お願い申し上げます。
よろしくお願いします。
「なるはや」(なるべく早く)のような曖昧な表現は避け、「明日中に」と具体的な期日を明示しましょう。
「よきにはからってください」も、「承認いただけますよう」と具体的に何をしてほしいのかを明確に伝えることが大切です。
ここまでは、ビジネスメールで避けるべき略語や俗語、そして曖昧な表現について解説しました。
次は、グローバルビジネスで通用する、より丁寧で誤解のないメールを作成するための具体的なポイントを見ていきましょう。
グローバルビジネスで通用する丁寧なメールの書き方
略語や俗語を避けるだけでなく、グローバルビジネスで成功するためには、より丁寧で洗練されたメールコミュニケーションが不可欠です。
ここでは、国際ビジネスの場で通用する、プロフェッショナルなメールの書き方について掘り下げていきましょう。
明確で簡潔な文章構成のポイント
相手に誤解なく情報を伝えるためには、明確かつ簡潔な文章構成が重要です。
以下のポイントを意識しましょう。
- 件名: 具体的に内容を示す(例: "Request for Quotation - [製品名]")
- 導入: 挨拶と自己紹介(初めての場合)、または簡潔な要件
- 本文: 結論を最初に述べ、その後に詳細を説明する
- 結び: 感謝の言葉と、次のステップ(返信期限など)を明示する
- 署名: 氏名、役職、会社名、連絡先を記載する
例文:問い合わせへの返信
件名:Re: Inquiry about [製品名]
[会社名] [担当者名]様
お問い合わせいただき、誠にありがとうございます。
[製品名]に関するお問い合わせについて、以下の通り回答いたします。
[回答内容1]
[回答内容2]
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。[期日]までにご返信いただけますと幸いです。
この例文では、件名で返信であることを明確にし、本文で簡潔に回答を提示しています。
結びでは、相手への配慮と次のアクションを促しています。
相手の立場に立った表現を選ぶ
文化やビジネス習慣が異なる相手とコミュニケーションを取る際は、相手の立場に立った表現を選ぶことが重要です。
- 敬称: 相手の役職や立場に合わせた敬称を使用する (例: Mr., Ms., Dr.)
- 丁寧な言葉遣い: "Please" や "Thank you" などの丁寧な表現を積極的に使う
- 文化的配慮: 相手の国の文化や習慣を尊重し、失礼のない表現を選ぶ
- 時差への配慮: 返信期限を設定する際は、相手の国の時間帯を考慮する
例文:依頼メール
件名:Request for [依頼内容]
[担当者名]様
いつもお世話になっております。
突然のご連絡失礼いたします。
この度、[依頼内容]について、貴社にご協力いただきたくご連絡いたしました。
[依頼内容の詳細]
ご多忙のところ恐縮ですが、[期日]までにご検討いただけますと幸いです。
この例文では、相手への敬意を示すために、丁寧な言葉遣いと依頼の形式を用いています。
また、期日を設けることで、相手に検討の時間を与えつつ、返信を促しています。
英文メールの基本的なマナーと注意点
英文メールには、日本語のメールとは異なるマナーや注意点があります。
- フォーマルな表現: 口語表現や略語は避け、フォーマルな表現を使用する
- 簡潔な文章: 長文にならないよう、簡潔で分かりやすい文章を心がける
- スペルチェック: 送信前に必ずスペルチェックを行い、誤字脱字を防ぐ
- 添付ファイル: ファイル名に日付や内容を明記し、ウイルスチェックを行う
例文:英文での依頼メール
Subject: Request for [Request Details]
Dear [Recipient Name],
I hope this email finds you well.
I am writing to request your assistance with [Request Details].
[Detailed explanation of the request]
We would greatly appreciate it if you could consider our request and provide us with your feedback by [Date].
Sincerely,
[Your Name]
[Your Title]
[Your Company]
[Your Contact Information]
この例文は、英文メールの基本的な構成に沿って、丁寧かつ明確に依頼内容を伝えています。
これらのポイントを踏まえ、相手に敬意を払い、誤解のないコミュニケーションを心がけることが、グローバルビジネスにおける信頼関係構築の第一歩となります。
国際メールの略語・俗語に関するよくある質問
さて、ここまでの説明で、国際ビジネスメールにおける略語や俗語の使用、そして丁寧なメールの書き方について理解が深まったかと思います。
しかし、まだ疑問が残る方もいらっしゃるかもしれません。
次は、国際メールの略語・俗語に関してよくある質問について見ていきましょう。
国際メールの略語・俗語に関するよくある質問
ここまでは、国際ビジネスメールにおける略語や俗語の使用を避けるべき理由と、具体的な代替表現について解説してきました。
しかし、実際のコミュニケーションでは、様々な疑問が生じることもあります。
ここでは、略語や俗語に関するよくある質問とその回答をまとめました。
略語は全く使ってはいけないのか?
完全に禁止されているわけではありません。
例えば、社内メールや、ごく親しい間柄の同僚とのやり取りであれば、略語を使用しても問題ない場合もあります。
しかし、国際ビジネスメール、特に初めてやり取りする相手や、目上の方、クライアントに対しては、略語の使用は避けるのが賢明です。
相手との関係性や、メールの目的に応じて、略語の使用を適切に判断することが重要です。
迷った場合は、略語を使わない、よりフォーマルな表現を選ぶようにしましょう。
相手が略語を使ってきた場合の対処法
相手が略語を使ってきた場合、特に不快に感じなければ、そのまま返信しても問題ありません。
ただし、意味が分からない略語や、誤解を招きそうな表現があった場合は、丁寧に確認するようにしましょう。
例文 略語の意味を確認する
件名:Re: [元の件名]
[相手の名前]様
ご連絡ありがとうございます。
恐れ入りますが、[略語] はどのような意味でしょうか?
お手数をおかけしますが、ご教示いただけますと幸いです。
上記のように、丁寧な言葉遣いで質問することで、相手に失礼な印象を与えることなく、略語の意味を確認できます。
また、相手が略語を多用する傾向がある場合は、自分は略語を使わない、よりフォーマルな表現で返信することで、暗に「略語を使わないでほしい」という意思を伝えることも可能です。
国際ビジネスメールは明確さと敬意が重要
国際ビジネスメールでは、文化や言語の違いを超えて、正確かつプロフェッショナルなコミュニケーションが求められます。
この記事で強調してきたポイントをまとめます。
- 略語や俗語は、文化的背景の違いから誤解を生む可能性があるため、使用を避ける。
- 明確で簡潔な文章構成を心がけ、誰にでも理解できる言葉を選ぶ。
- 相手への配慮と敬意を常に意識し、丁寧な言葉遣いを心がける。
これらの点を踏まえ、まずは、普段のメールで略語を使っていないか、一度見直してみてはいかがでしょうか。
少し意識を変えるだけで、よりスムーズで誤解のないコミュニケーションに繋がるはずです。
異文化間のビジネスは、信頼関係の構築が成功の鍵となります。
皆様のグローバルビジネスが、より一層発展することを心より応援しています。